「今月もなんとかなった」は、来月も続くとは限らない
毎月、通帳の残高を見て安心する。「今月は大丈夫だった」
来月になって、また通帳を見る。「今月もなんとか……」
それは経営ではない。 毎月「運試し」をしているだけだ。
「来月の売上はどうなるか」「3ヶ月後に資金は足りるか」──こうした問いに答えられる飲食店オーナーは驚くほど少ない。
答えを持つための道具が、年間売上計画だ。
年間売上計画とは?──1枚の表でいい
| 月 | 売上目標 | 食材費 | 人件費 | 固定費 | 利益 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1月 | 200万 | 60万 | 50万 | 55万 | 35万 |
| 2月 | 150万 | 45万 | 48万 | 55万 | 2万 |
| 3月 | 180万 | 54万 | 50万 | 55万 | 21万 |
| 4月 | 195万 | 58万 | 50万 | 55万 | 32万 |
| … | … | … | … | … | … |
| 12月 | 250万 | 75万 | 55万 | 55万 | 65万 |
| 年間 | 2,300万 | 690万 | 610万 | 660万 | 340万 |
これだけ。 12行の表を作るだけで、年間の見通しが立つ。
作り方──3ステップ
ステップ1: 月別の売上を予測する
去年の実績がある場合:
去年の月別売上をベースに、今年の予測を立てる。
| 月 | 去年の売上 | 今年の調整 | 今年の目標 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 190万 | +5%(値上げ) | 200万 |
| 2月 | 145万 | +3% | 150万 |
| 12月 | 240万 | +4% | 250万 |
去年の実績がない場合(開業1年目):
飲食店の月別指数を使って推計する。
| 月 | 指数 | 想定月商200万の場合 |
|---|---|---|
| 1月 | 100 | 200万 |
| 2月 | 75 | 150万 |
| 3月 | 90 | 180万 |
| 4月 | 95 | 190万 |
| 5月 | 90 | 180万 |
| 6月 | 85 | 170万 |
| 7月 | 90 | 180万 |
| 8月 | 80 | 160万 |
| 9月 | 85 | 170万 |
| 10月 | 95 | 190万 |
| 11月 | 100 | 200万 |
| 12月 | 125 | 250万 |
12月が最高で2月が最低。この波を事前に知っているか知らないかで、資金繰りの安定度がまったく違う。
ステップ2: 月別の費用を見積もる
固定費は毎月ほぼ同じ。 変わるのは食材費(売上連動)と人件費(繁忙期のシフト増)。
| 費目 | 計算方法 |
|---|---|
| 食材費 | 売上 × 原価率(30%なら売上の30%) |
| 人件費 | 固定分 + 繁忙期の追加シフト |
| 家賃 | 毎月同じ |
| 光熱費 | 夏・冬は高め、春・秋は低め |
| その他固定費 | 毎月同じ |
ステップ3: 利益を計算する
利益 = 売上 − 食材費 − 人件費 − 固定費
赤字の月があっても焦らない。 年間でプラスなら問題ない。2月に2万円の利益しか出なくても、12月に65万円の利益が出れば年間ではプラスだ。
ただし、赤字の月に手元資金がショートしないように備えておくこと。 これが年間計画の最大の価値。
毎月5分の振り返り──計画vs実績
毎月末に、実績を計画の横に書く。
| 月 | 計画 | 実績 | 達成率 | メモ |
|---|---|---|---|---|
| 1月 | 200万 | 195万 | 98% | ○ ほぼ計画通り |
| 2月 | 150万 | 130万 | 87% | △ 雪の日が多かった |
| 3月 | 180万 | 190万 | 106% | ○ 歓送迎会で上振れ |
5分で終わる。 でもこの5分の積み重ねが、1年後の経営判断力を大きく変える。
達成率の判断基準
| 達成率 | 判定 | アクション |
|---|---|---|
| 95%以上 | ◎ | 計画通り。このまま継続 |
| 85〜95% | △ | 原因分析。一時的か構造的かを判断 |
| 85%未満 | ✕ | 即座に対策。翌月の計画を修正 |
年間計画があると変わること
「閑散期が怖くなくなる」
計画があれば、2月の売上減は想定内。繁忙期(12月)に多めに利益を確保しておく判断ができる。
「設備投資の判断ができる」
「新しい冷蔵庫を買いたい」──いつ買うべきか? 年間計画を見れば、利益が出る月の後に買うという判断ができる。
「融資が通りやすくなる」
年間計画を持っている=「この人は数字で経営を管理している」。金融機関の信頼を得やすい。
「心の余裕が生まれる」
「来月は大丈夫かな……」という漠然とした不安が、「来月は計画では170万円。達成のために○○をやる」という具体的な行動に変わる。
今すぐやること
- 過去12ヶ月の月別売上をまとめる(レジデータ or 通帳)
- 来年度(次の12ヶ月)の月別売上目標を設定する
- 月別の費用(食材費、人件費、固定費)を見積もる
- 各月の利益予測を計算する
- 赤字になりそうな月があるか確認する
- 赤字月に備えて、繁忙期の利益をストックする計画を立てる
年間計画は、1時間で作れる。 そして、その1時間が、12ヶ月の経営を変える。
KitchenCostは、日々の食材費と原価率を記録するアプリです。毎月の食材費が自動で集計されるので、年間計画の「実績」欄に入力するデータが簡単に手に入ります。計画と実績のギャップを見るのが、経営改善の第一歩です。