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飲食店の年間ランニングコスト、全部でいくら?──「家賃と食材費」だけ見ていると赤字になる理由

飲食店の年間ランニングコストを全費目で一覧化。家賃・食材費・人件費だけでなく、保険・害虫駆除・グリストラップ・ゴミ処理まで。月商200万円モデルで年間いくら出ていくか、具体的な金額で解説。

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目次

「家賃と食材費は把握している。人件費もなんとなくわかっている」

──でも、それ以外に年間いくら出ていっているか、パッと答えられるだろうか。

保険料。害虫駆除。グリストラップ清掃。事業ゴミの回収費。POSレジの月額。グルメサイトの掲載料。消耗品。

1つひとつは月数千円〜数万円。でもこれが10項目以上積み重なると、年間で100万円を超える

2025年の飲食店倒産は900件で過去最多を更新した(帝国データバンク 2026年1月13日公表)。そのうち77.3%が負債5,000万円未満の小規模店。大きな借金で潰れたのではなく、毎月の経費が少しずつ利益を食い潰して、気づいたときにはもう間に合わなかった──そういう倒産が大半だ。

この記事では、飲食店の年間ランニングコストを全費目で一覧化する。「だいたいこのくらいかかる」ではなく、月商200万円の個人飲食店を想定して、具体的な金額を入れた。

「うちの店は全部でいくら出ていっているのか」を把握する第一歩として使ってほしい。


先に結論

  • 月商200万円(年商2,400万円)の個人飲食店で、年間ランニングコストは約1,900万〜2,200万円
  • 営業利益として残るのは売上の5〜15%。年間120〜360万円程度
  • 食材費・人件費・家賃の「3大コスト」で売上の**65〜75%**を占める
  • 残りの「細かい経費」を合計すると年間100〜200万円。ここを把握していない店が多い
  • 全費目を毎日追う必要はない。大きい3つは毎週、残りは月1回チェックすれば十分

年間ランニングコスト一覧表(月商200万円モデル)

まず全体像を見てほしい。月商200万円(席数10〜15席、東京近郊)の個人飲食店を想定している。

費目月額の目安年額の目安売上比率
① 食材費60〜70万円720〜840万円30〜35%
② 人件費50〜70万円600〜840万円25〜35%
③ 家賃15〜20万円180〜240万円7.5〜10%
④ 水道光熱費10〜16万円120〜192万円5〜8%
⑤ 広告宣伝費2〜5万円24〜60万円1〜2.5%
⑥ 通信・IT費1.5〜2.5万円18〜30万円0.75〜1.25%
⑦ リース料1.5〜5万円18〜60万円0.75〜2.5%
⑧ 保険料0.4〜0.7万円5〜8万円0.2〜0.35%
⑨ 害虫駆除約0.6万円約7〜8万円約0.3%
⑩ グリストラップ清掃2〜2.5万円24〜30万円1〜1.25%
⑪ ゴミ処理0.8〜1.5万円10〜18万円0.4〜0.75%
⑫ 消耗品・雑費2〜5万円24〜60万円1〜2.5%
⑬ 税金・社会保険後述
合計(税金除く)約146〜199万円約1,750〜2,386万円約73〜99%

この表を見て「売上のほとんどが経費で消える」と感じたなら、正しい。 飲食店の営業利益率は一般的に5〜15%。月商200万円で手元に残るのは10万〜30万円。ここから自分の生活費を出す。

だからこそ、「何にいくら出ているか」を把握することが経営の出発点になる。


① 食材費(原価)──売上の30〜35%

飲食店で最も大きな変動費。売れれば増え、売れなくても廃棄で消える。

目安:月商200万円なら月60〜70万円、年間720〜840万円

業態原価率の目安
カフェ・喫茶20〜25%
居酒屋28〜35%
ラーメン30〜35%
寿司40〜45%

「原価率30%」が目安としてよく出てくるが、これはあくまで全業態の平均的な目標値。寿司のように原価率が高い業態もあれば、バーのように15〜25%の業態もある。

大事なのは**「自分の業態の適正値を知って、毎週チェックすること」**。月末にまとめて計算するのでは遅い。食材の仕入れ価格は週単位で変わるからだ。

📎 食材費の管理方法は「飲食店の変動費と固定費の違い」「廃棄ロスの削減対策」で詳しく解説しています。


② 人件費──売上の25〜35%

食材費と並ぶもう一つの大きなコスト。FL比率(Food+Labor)が60%を超えると危険信号

目安:月商200万円なら月50〜70万円、年間600〜840万円

2025年10月の最低賃金改定で、全国加重平均は時給1,121円(前年比+63円、+6.0%)。東京は1,226円。全都道府県で初めて1,000円を超えた。

忘れがちなのが社会保険の事業主負担。従業員の給与に対して約15〜16%を会社(事業主)が負担する。

項目事業主負担率
健康保険(協会けんぽ・東京)約4.96%
厚生年金9.15%
雇用保険0.65%
労災保険(飲食業)約0.3%
子ども・子育て拠出金0.36%
合計約15.4%

つまり、アルバイトに月20万円払っているなら、実際にかかるコストは約23万円。この3万円の差を見落としている店は多い。

飲食店ドットコムの2025年調査では、飲食店経営者の**55.3%が「人件費増は避けられず、利益を圧迫する」**と回答している。

📎 人件費の適正化については「人時売上高の計算とシフト最適化」で解説しています。


③ 家賃──売上の7〜10%

家賃は一度決めたらほぼ変えられない固定費。物件選びの段階でランニングコストの大枠が決まる。

目安:月15〜20万円、年間180〜240万円(東京近郊10坪の場合)

エリア坪単価(月額)10坪の月額
東京・渋谷周辺約36,000円約36万円
東京・郊外10,000〜15,000円10〜15万円
大阪・北区約24,000円約24万円
地方都市5,000〜10,000円5〜10万円

よく使われる目安は**「売上の10%以内」。もう1つの見方は「3日分の売上で家賃を賄える」**こと。月商200万円なら1日あたり約7.7万円(26日営業)。家賃20万円なら約2.6日分。ギリギリ合格ラインだ。

📎 「家賃10万円の店に必要な最低月商の逆算」も参考になります。


④ 水道光熱費──売上の5〜8%

電気・ガス・水道の合計。季節変動が大きいのが特徴で、夏のエアコンと冬の暖房・ガスでピークが来る。

目安:月10〜16万円、年間120〜192万円

内訳の比率は一般的に電気70〜80%、ガス10〜20%、水道5〜10%。ただしラーメン店のようにスープを長時間炊く業態はガス比率が30〜40%まで上がる。

業態売上に対する比率
カフェ・軽食3〜5%
居酒屋5〜6%
ラーメン7〜10%

見落としがちなのは**「基本料金」の存在**。電気もガスも、使わなくても基本料金がかかる。契約アンペアや容量が過大になっていないか、年に1回は確認したい。

また、プロパンガスと都市ガスの差は約1.7〜1.8倍。プロパン地域でガス代が高い場合、プロパン会社の変更だけで月1〜2万円下がるケースもある。

📎 削減の具体策は「水道光熱費の削減ガイド」で詳しく解説しています。


⑤ 広告宣伝費──売上の1〜5%

Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)やInstagramは無料で始められる。有料のグルメサイト掲載は効果を見極めてから。

目安:月2〜5万円、年間24〜60万円

媒体月額費用
Googleビジネスプロフィール無料
Instagram(オーガニック運用)無料
食べログ(有料プラン)1〜10万円
ぐるなび0〜3万円
ホットペッパーグルメ0円〜(有料プランあり)

個人店の場合、まずはGoogleビジネスプロフィールの充実が最優先。写真、営業時間、メニュー情報を正確に登録するだけで、近隣からの検索流入が増える。これは0円でできる。

有料のグルメサイトに月3万円払うなら、その3万円で食材費を改善できないかを先に考える。広告費は売上が安定してからでも遅くない。

📎 「Googleビジネスプロフィールの設定ガイド」も参考になります。


⑥ 通信・IT費──月1.5〜2.5万円

インターネット回線、電話、POSレジの月額利用料など。

目安:月1.5〜2.5万円、年間18〜30万円

項目月額
光回線(インターネット)4,000〜6,000円
タブレットPOS(Square, Airレジ等)0〜10,000円
電話(携帯兼用の場合)2,000〜5,000円
その他サブスク(会計ソフト等)1,000〜3,000円

タブレットPOSは無料プランでも基本機能は使える。SquareやAirレジは初期費用もほぼゼロ。最初から高機能な有料プランを契約する必要はない。


⑦ リース料──月1.5〜5万円

業務用冷蔵庫や製氷機など、高額な厨房機器をリースで導入している場合の月額費用。

目安:月1.5〜5万円(機器2〜5台分)、年間18〜60万円

機器例定価リース月額(6年)
業務用冷蔵庫(ホシザキ)約112万円約5,800円
製氷機約50万円約3,000円
食洗機約80万円約4,500円

リースの注意点:6年間の総支払額は購入価格の1.2〜1.5倍になる。途中解約は原則できない。中古購入のほうが総コストで有利なケースも多い。

📎 リースと購入の判断基準は「厨房機器のリース・購入・中古の判断基準」で解説しています。


⑧ 保険料──月4,000〜7,000円

飲食店に必要な保険は1つではない。火災保険だけでは足りない

目安:月4,000〜7,000円、年間5〜8万円

保険の種類内容必要性
火災保険建物・什器・在庫の損害必須(賃貸契約で義務の場合が多い)
借家人賠償責任借りている物件への損害賠償必須(賃貸なら)
施設賠償責任お客様が店内でケガした場合強く推奨
生産物賠償責任(PL保険)食中毒・異物混入の賠償強く推奨
休業損害事故・災害で休業した際の補填あると安心

食中毒が1件出ると、営業停止+賠償で数百万円の損害になりうる。PL保険に入っていない店は今すぐ確認してほしい。月数百円の違いで加入できることが多い。


⑨ 害虫駆除──月約6,000円

飲食店は衛生管理の観点から、定期的な害虫駆除が事実上必須

目安:年間約7〜8.5万円(月1回の定期契約の場合)

ダスキンの例では、15坪までの店舗で初回施工19,800円(税込)、月次のメンテナンスが6,600円〜(税込)。初年度は計82,500円〜。

「うちはゴキブリ出ないから大丈夫」と思っているオーナーもいるが、保健所の立入検査で衛生管理の記録を求められることがある。定期駆除の契約書は、衛生管理をしている証拠にもなる。


⑩ グリストラップ清掃──月2〜2.5万円

飲食店の排水設備に必ず設置されているグリストラップ(油脂分離槽)。放置すると詰まり→浸水→営業停止のリスクがある。

目安:月1回の業者清掃で年間24〜30万円

容量1回あたり年間(月1回)
250L以下19,000〜25,000円23〜30万円
250L以上30,000〜80,000円36〜96万円

定期契約にすると割引が効くことが多い。また、日常清掃(バスケットのゴミ取り、油の除去)を毎日やるだけで、業者清掃の頻度を2ヶ月に1回に減らせる場合もある。


⑪ ゴミ処理──月8,000〜15,000円

家庭ゴミと違い、事業系のゴミ(産業廃棄物)は自治体の回収に出せない地域が多い。許可業者との契約が必要。

目安:月8,000〜15,000円、年間10〜18万円

東京23区の場合、事業系一般廃棄物の処理手数料上限は46円/kg。小規模店で週2回回収なら月8,000〜15,000円が目安。

コスト削減のポイントはゴミの分別。リサイクル可能な段ボールや瓶を分ければ、処理対象のゴミが減って費用も下がる。


⑫ 消耗品・雑費──月2〜5万円

割り箸、紙ナプキン、洗剤、ラップ、ゴミ袋、事務用品、ユニフォームのクリーニング代など。

目安:月2〜5万円、年間24〜60万円

1つひとつは数百円〜数千円。でも管理していないと際限なく増える。月末にレシートをまとめて「消耗品費」で仕訳すると、何にいくら使ったかが見えなくなる。

せめて**「厨房消耗品」「客席消耗品」「事務用品」の3つに分けて記録する**だけで、無駄が見えやすくなる。


⑬ 税金・社会保険

個人事業主として飲食店を営む場合、主な税金は以下のとおり。

税金概要
所得税課税所得に対して5〜45%の累進課税
住民税課税所得に対して約10%
個人事業税飲食業は5%(年290万円の控除あり)
消費税課税売上1,000万円超で納税義務(簡易課税の場合、みなし仕入れ率60%)
国民健康保険所得に応じて算出。上限あり
国民年金月16,980円(2024年度)

税金の金額は所得額で大きく変わるため、一律の目安は出しにくい。ただし、年商2,400万円・経費率85%で課税所得360万円の場合、所得税+住民税+事業税+国保+国民年金で年間約100〜180万円程度になる。

📎 節税と確定申告については「確定申告・節税・インボイスガイド」で詳しく解説しています。


全体像を「FLRコスト」で見る

個別の費目を見た後、全体のバランスを確認する方法がある。

FLRコスト比率 = (Food+Labor+Rent)÷ 売上 × 100

指標目標危険ライン
F(原価率)30%前後35%超え
L(人件費率)25〜30%35%超え
R(家賃比率)7〜10%10%超え
FLR合計65〜70%75%超え

FLRが65%なら、残り35%で光熱費・通信・保険・税金・その他を賄い、さらに利益を出す。FLRが75%を超えると、どれだけ細かい経費を節約しても利益が出ない構造になっている。

まずはFLRを計算してみてほしい。75%を超えていたら、細かい経費の前に食材費か人件費の見直しが先になる。

📎 FLコスト(プライムコスト)の詳しい解説は「プライムコストが60%超えたときの立て直し」を参照。


「見えない経費」チェックリスト

最後に、見落としやすい費目をチェックリストにまとめた。通帳やクレジットカード明細と照らし合わせて、抜けがないか確認してほしい。

月1回、5分で確認できるリスト

  • グルメサイトの掲載料(食べログ、ぐるなびなど)は払っている?
  • POSレジやオーダーシステムの月額は?
  • 会計ソフト(freee、マネーフォワード)の月額は?
  • 店舗保険は火災だけ? PL保険(食中毒)は入っている?
  • 害虫駆除の定期契約はしている? していない場合、費用は?
  • グリストラップの清掃頻度は? 業者に頼んでいる?
  • ゴミ処理の契約内容を最後に見直したのはいつ?
  • リース契約の残期間と月額は把握している?
  • 使っていないサブスクリプション(音楽配信、予約システム等)はない?
  • 消耗品の発注先は1社に集約できている?(まとめ割引の余地)

このうち3つ以上「よくわからない」があったら、今月中に確認する価値がある。年間で数万〜数十万円の改善余地が見つかることは珍しくない。


今週やること

  1. 通帳とカード明細を直近3ヶ月分並べる。この記事の13費目に分類して、月平均を出す
  2. FLR比率を計算する。食材費+人件費+家賃が売上の何%か確認
  3. 上のチェックリストを1回やる。「よくわからない」が多い費目は今月中に確認

全費目を毎日追う必要はない。大きい3つ(食材費・人件費・家賃)は毎週、残りは月1回。これだけで「年間いくら出ていっているか」が数字で見えるようになる。

数字が見えれば、どこを削るか・どこに投資するかの判断ができる。「なんとなく利益が出ていない」から「ここが原因で利益が出ていない」に変わる。


原価計算の「見える化」を、まず食材費から

13費目すべてを一度に管理するのは大変だ。

まずは最も大きい「食材費」を正確に把握することから始めてみてほしい。レシピごとの原価がわかれば、メニュー全体の原価率が見える。原価率が見えれば、FLR比率も計算できる。

KitchenCostは、レシピの材料と仕入れ価格を入力するだけで原価を自動計算する無料アプリです。仕入れ価格が変わったときも、1か所変えれば全レシピに反映されます。

年間のランニングコストを把握する第一歩として、まず食材費の「見える化」から始めてみませんか。

よくある質問

飲食店の年間ランニングコストは全部でいくらですか?

月商200万円(年商2,400万円)の個人飲食店の場合、年間ランニングコストは約1,900万〜2,200万円が目安です。内訳は食材費720〜840万円、人件費600〜840万円、家賃180〜240万円、水道光熱費120〜192万円、その他(保険・通信・リース・広告・害虫駆除・ゴミ処理等)で年間100〜200万円。営業利益として手元に残るのは売上の5〜15%、つまり年間120〜360万円程度です。

飲食店のランニングコストで見落としやすい費目は何ですか?

害虫駆除(ゴキブリ対策の定期契約で年7〜8万円)、グリストラップ清掃(月1回で年24〜30万円)、事業ゴミ処理(週2回回収で年10〜18万円)、店舗保険(火災+賠償責任+食中毒で年5〜8万円)の4つは見落とされがちです。合計すると年間50〜64万円になり、営業利益が5%の店ではこれだけで利益の2ヶ月分以上に相当します。

飲食店のFLRコスト比率とは何ですか?

F(Food=食材費)、L(Labor=人件費)、R(Rent=家賃)の3大コストを売上で割った比率です。この3つで売上の65〜70%以内に収まっていれば、営業利益10%以上が見込める健全な状態です。FL比率だけで60%を超えている場合は、原価か人件費のどちらかを先に見直す必要があります。

年間ランニングコストを把握するには何から始めればいいですか?

まずは直近3ヶ月分の通帳・クレジットカード明細・レシートを全部並べて、この記事の13費目に分類してください。月平均を出して12をかければ年間の概算が出ます。全費目を毎月追う必要はありません。まず大きい3つ(食材費・人件費・家賃)を毎週、残りは月1回チェックするだけで、経費の全体像が見えるようになります。

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