「今月、けっこう売ったはずなのに……」
通帳を見たら、思ったほど残っていない。
売上は悪くない。お客さんも来ている。なのに利益が薄い。その正体はプライムコストが60%を超えていることかもしれません。
プライムコストとは、食材費と人件費を足した数字です。飲食店の売上の中で最も大きな2つのコスト。これが売上の60%を超え続けると、家賃や光熱費を払った後にはほとんど何も残りません。
先に結論
- プライムコスト=食材費+人件費。売上の55〜60%以下が健全ライン
- 60%超えの原因は「F(食材費)」か「L(人件費)」のどちらか。まず分解する
- 全部を一度に直そうとしない。上位から1つずつ潰す
プライムコストの計算
プライムコスト率 = (食材費 + 人件費) ÷ 売上 × 100
たとえば、月商300万円の店で——
- 食材費:95万円(31.7%)
- 人件費:90万円(30.0%)
- プライムコスト率:61.7%
残りの38.3%(115万円)から家賃、光熱費、消耗品、借入返済、広告費……を払う。家賃が30万円、光熱費15万円、その他20万円なら、残るのは50万円。ここからオーナーの給料を出す。
プライムコストが65%だったら? 残りは105万円。同じ経費を引くと40万円。月10万円の差は年間120万円になります。
2025〜2026年、FとLが同時に重くなっている
プライムコストが厄介なのは、FもLも同時に上がっていること。
- 2025年の食品値上げは20,609品目(帝国データバンク)
- 最低賃金は全国加重平均1,121円に上昇(厚生労働省)
- 価格転嫁率は飲食業で32.3%。コスト増の7割近くを自腹で吸収
- 2025年の飲食店倒産は1,002件。過去30年で最多
食材費を抑えても人件費が上がる。人件費を抑えても食材費が上がる。両方同時に来るから、片方だけ見ていても間に合わないのが今の環境です。
立て直しの3ステップ
ステップ1:FとLを分解する
まず、プライムコスト率を「F(食材費率)」と「L(人件費率)」に分けます。
F率 = 食材費 ÷ 売上 × 100
L率 = 人件費 ÷ 売上 × 100
| ケース | F率 | L率 | PC率 | 重い方 |
|---|---|---|---|---|
| A店 | 35% | 28% | 63% | 食材費 |
| B店 | 28% | 35% | 63% | 人件費 |
| C店 | 32% | 32% | 64% | 両方 |
同じ63〜64%でも、原因が全く違います。分解しないと、的外れな対策を打ってしまう。
ステップ2:重い方から手をつける
食材費が重い場合(F率 > 32%)
- 売上上位5品の原価率を確認する
- 原価率が高い商品のうち、粗利額も低いものを特定する
- 盛り付け量の見直し、仕入れ先の比較、値上げ検討——1品ずつ対応
人件費が重い場合(L率 > 30%)
- 時間帯別の売上と人件費を出す
- 売上が少ないのに人員が多い時間帯を特定する
- シフトの見直し、オペレーション改善——1時間帯ずつ対応
ステップ3:週次で追いかける
月次だけだと、悪化に4週間気づけません。
週次で簡易チェックを入れます。
- 週の食材費÷週の売上=F率
- 週の人件費÷週の売上=L率
- 前週比で合計3pt以上動いたら原因を確認
10分あればできます。これだけで「手遅れになる前に手が打てる」状態になります。
業態別のプライムコスト目安
| 業態 | PC率の目安 | 内訳の傾向 |
|---|---|---|
| ラーメン店 | 55〜62% | F高め、L低め |
| 居酒屋 | 58〜65% | F中、L高め |
| カフェ | 50〜58% | F低め、L中 |
| 焼肉店 | 60〜68% | F高め、L低め |
| 定食屋 | 55〜63% | F中、L中 |
自分の業態の目安より5pt以上高ければ、優先的に見直しが必要です。
今週やること
- 先月の食材費と人件費を出す
- プライムコスト率を計算する
- F率とL率に分解して、どちらが重いか特定する
- 重い方の上位3項目だけ、改善候補を書き出す
一気に全部を直そうとしないでください。重い方から、上位から、1つずつ。 プライムコストは1か月で劇的に変わるものではありませんが、毎週見ていれば確実に改善方向に動きます。
KitchenCostなら、レシピごとの原価率と粗利額が自動で出ます。プライムコストのF(食材費)を品目別に把握するのが楽になります。