「値上げしたのに、なぜか手元のお金が増えない」
この相談、2026年に入ってからさらに増えています。 客離れが怖くて大きく上げられない。だから小さく上げる。でも利益は戻らない。これが小規模店の典型パターンです。
先に結論
- まず見るべきは「売上」ではなく「1品ごとの粗利額」
- 「価格転嫁率(コスト増を価格に乗せられた割合)」が低い局面では、一律値上げが逆効果になりやすい
- 14日だけ実質原価を追うと、どの商品を据え置き、どれを上げるかが明確になる
いま起きていること(2026年3月時点)
- 2025年の飲食店倒産は900件で過去最多(帝国データバンク)
- 飲食店の価格転嫁率は32.3%。全業種平均39.4%より低い(帝国データバンク)
- 2026年の食品値上げは、1〜6月累計見込み4,493品目(2月27日公表)(帝国データバンク)
- 最低賃金の全国加重平均は1,121円(前年度比66円引き上げ)(厚生労働省)
現場調査でも、飲食店の**90.8%が仕入れ総額の上昇を回答。さらに66.7%**が「11%以上上昇」と答えています(飲食店ドットコム)。
まず言葉をそろえます
価格転嫁率: 上がったコストを、販売価格にどれだけ乗せられたかの割合按分(あんぶん): 費用を商品ごとに割り振ること実質原価: 食材費だけでなく、包材費や手数料などを足した本当の原価
難しい言葉に見えますが、やることはシンプルです。
「抜けているコストを足して、1品ごとの利益を見直す」だけです。
14日原価チェックのやり方
1. 売上上位10品だけ選ぶ
全メニューを一気にやると続きません。まずは上位10品だけで十分です。
2. 実質原価を出す
実質原価 = 食材費 + 包材費 + 決済手数料 + 廃棄の按分 + 仕込み人件費の按分
粗利額 = 税抜売価 - 実質原価
3. 値上げ幅を「感覚」で決めない
例として、税込980円のランチ(税抜891円)を考えます。
- 見直し前の実質原価: 446円
- 粗利額: 891 - 446 = 445円
仕入れ上昇後:
- 実質原価: 481円
- 粗利額: 891 - 481 = 410円
ここで30円だけ値上げして税込1,010円(税抜918円)にしても、
- 新しい粗利額: 918 - 481 = 437円
まだ見直し前の445円に戻りません。
この「戻っていない差」が、値上げしたのに利益が増えない正体です。
4. メニューを3分類する
- 据え置き: 来店の入口になる看板商品
- 小幅改定: +20〜40円で戻せる商品
- 重点改定: 赤字または粗利が薄すぎる商品
一律値上げより、この方法の方が客離れを抑えやすいです。
なぜ14日なのか
現場では「値上げは効いた(62.1%)」という回答がある一方、最大の不安は「客離れ」でした(飲食店ドットコム)。 だからこそ、長期の我慢比べではなく、14日だけ数字で判定するのが現実的です。
14日で見る数字は3つだけです。
- 客数
- 該当商品の注文数
- 1日あたり粗利額
この3つが崩れていなければ、次の改定に進んで問題ありません。
今週やること
- 売上上位10品の実質原価を再計算する
- 3分類(据え置き/小幅/重点)を決める
- 14日分の記録表を作る
- 14日後に「客数・注文数・粗利額」で判定する
値上げは、勇気より順番です。 順番を守ると、客離れの不安を抑えながら利益を戻せます。
メニュー別の実質原価を毎回計算するのが大変なら、KitchenCostで先に土台を作っておくと判断が速くなります。