「上げたい。でも怖い。」 値上げの相談は、だいたいこの一言から始まります。
不安は正しいです。 ただ、2026年は据え置きのほうが危ない場面が増えています。
先に結論
- 客離れを抑える鍵は、
値上げ率より対象メニューの順番です。 - 一律改定より、影響の大きい商品からの段階改定が安全です。
- 告知は「理由・対象・実施日」の3点を短く伝えるだけで十分です。
2026年に値上げ判断が難しい理由
帝国データバンクの2025年11月28日公表では、2025年の飲食料品値上げは2万609品目。
前年1万2520品目から+64.6%で、原価の入力値が1年で大きく動きました。
一方で、同社の飲食店倒産動向(2026年1月13日公表)では、飲食店の価格転嫁率は32.3%で全業種平均39.4%を下回ります。
つまり、上がったコストを価格へ十分に乗せ切れていない店が多いということです。
失敗しやすい3パターン
- 全メニューを同率で上げる
- 告知なしで当日から改定する
- 競合価格だけ見て自店の原価を見ない
この3つは、客数と粗利を同時に落としやすいです。
実務で使える3ステップ
ステップ1: 上げる対象を選ぶ
先にこの順で並べると判断が早くなります。
- 目標原価率から3pt以上悪化した商品
- 提供工数が高く、ピーク帯を圧迫する商品
- 代替商品があり価格調整しやすい商品
ステップ2: 改定幅を2段階で設計
たとえば必要改定が8%なら、1回で8%より4% + 4%のほうが反応を見ながら動けます。
必要改定率(%) = (必要売価 - 現在売価)÷ 現在売価 × 100
ステップ3: 告知は短く出す
原材料費・人件費の上昇に伴い、品質維持のため
2026年3月1日より一部商品の価格を改定いたします。
長文で弁明するより、事実を短く明示するほうが受け止められやすいです。
小さな店向けの試算例
- 現在売価: 980円
- 現在原価: 410円(原価率41.8%)
- 目標原価率: 38%
必要売価 = 410 ÷ 0.38 = 1,078円
必要改定率 = (1,078 - 980) ÷ 980 = 約10.0%
この場合、
- 1回目: 980円 → 1,030円
- 2回目: 実績確認後に 1,030円 → 1,080円
のように分割すると、客数と粗利の両方を見ながら進められます。
値上げ後に見るべき数字
- 対象商品の販売数(前週比)
- 客単価
- 粗利額
- 再来店率(取れる範囲で)
売上だけ見ると判断を誤ります。 値上げ後は、粗利額が戻っているかを先に確認してください。
今週のチェックリスト
- 上位10商品の必要売価を計算した
- 一律ではなく対象商品の優先順位を決めた
- 2段階改定の案を作った
- 告知文を事前に準備した
- 値上げ後2週間の確認指標を決めた
まとめ
値上げで客離れを抑えるコツは、勇気より設計です。
「どれだけ上げるか」だけでなく、 「どの商品を、どの順番で、どう伝えるか」を決める。 これだけで、失敗確率はかなり下がります。