「コーヒーの原価率は10%。ラーメン屋の30%より圧倒的に安い。だからカフェは儲かるはず。」
開業前にこう考える人は多い。気持ちはわかる。原価率が低いということは、売上のうち手元に残る割合が大きいということ。理屈としては合っている。
でも、カフェの利益率は飲食業の中でも低い部類に入る。 開業3年以内に閉店するカフェは少なくない。
なぜ原価率が低いのに利益が出ないのか。その答えは「客単価」と「回転率」にある。
カフェの原価率は確かに低い──でも意味が違う
まず、カフェの主力メニュー別の原価率を見てみよう。
ドリンクの原価率
| メニュー | 材料費(1杯) | 販売価格 | 原価率 |
|---|---|---|---|
| ドリップコーヒー | 20〜40円 | 400〜500円 | 5〜10% |
| カフェラテ | 50〜80円 | 500〜600円 | 10〜15% |
| 抹茶ラテ | 60〜100円 | 550〜650円 | 11〜15% |
| 紅茶 | 15〜30円 | 400〜500円 | 4〜8% |
| スムージー | 100〜150円 | 600〜700円 | 17〜21% |
| レモネード | 40〜60円 | 450〜550円 | 9〜11% |
コーヒー1杯の原価は20〜40円。 400円で売れば原価率5〜10%だ。ラーメン(原価率30%)やとんかつ(原価率35%)と比べると、圧倒的に低い。
フードの原価率
| メニュー | 材料費 | 販売価格 | 原価率 |
|---|---|---|---|
| トースト(バタートースト) | 30〜50円 | 300〜400円 | 10〜13% |
| サンドイッチ | 150〜250円 | 600〜800円 | 25〜31% |
| パスタ | 200〜300円 | 900〜1,100円 | 22〜27% |
| ケーキ(自家製) | 150〜200円 | 500〜600円 | 25〜33% |
| ケーキ(仕入れ) | 250〜350円 | 500〜600円 | 42〜58% |
ここに注目してほしい。仕入れケーキの原価率は42〜58%。カフェでよく見る「ショーケースに並べたケーキ」は、外注で仕入れている場合、原価率が非常に高い。
自家製なら25〜33%に抑えられるが、そのためには製菓の技術と設備が必要になる。
なぜ原価率が低いのに利益が出ないのか
答えはシンプル。「1回の来店で使う金額(客単価)」が低すぎるからだ。
業態別の客単価比較
| 業態 | 平均客単価 | 原価率 | 粗利(1人あたり) |
|---|---|---|---|
| 居酒屋 | 3,500円 | 30% | 2,450円 |
| ラーメン店 | 1,000円 | 30% | 700円 |
| カフェ(ドリンクのみ) | 450円 | 10% | 405円 |
| カフェ(ドリンク+フード) | 900円 | 22% | 702円 |
居酒屋の粗利2,450円に対して、カフェのドリンクのみは405円。 原価率が3倍低くても、粗利は6倍少ない。
ここから家賃、人件費、光熱費、雑費を引く。客単価が低いカフェでは、1人あたりの粗利で固定費をカバーしきれない。
つまり、カフェの経営は「原価率の勝負」ではなく、「客数×客単価でいかに固定費をカバーするか」の勝負だ。
カフェ開業の初期費用——10坪なら500〜1,000万円
具体的な数字を見てみよう。10坪(約33㎡)・10〜15席の小規模カフェの場合。
| 項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 物件取得費(保証金・礼金・仲介) | 120〜200万円 | 家賃の8〜12ヶ月分 |
| 内装工事 | 200〜400万円 | 坪単価40〜60万円 |
| 厨房設備(エスプレッソマシン含む) | 50〜200万円 | エスプレッソマシンだけで50〜150万円 |
| 家具・備品 | 30〜50万円 | テーブル、椅子、食器 |
| 開業届・営業許可 | 2〜5万円 | |
| 運転資金(3ヶ月分) | 100〜200万円 | 家賃+人件費+仕入+光熱費 |
| 合計 | 502〜1,055万円 |
エスプレッソマシンが高い。 これがカフェ特有のコスト。ラテやカプチーノを出すなら避けて通れない設備投資だ。
家庭用の数万円のものでは業務用として使えない。シモネリ、ラ・マルゾッコ、ビクトリアアルドゥイーノといったメーカーの業務用は50〜150万円が相場。中古でも30〜80万円はする。
費用を抑えるには
- 居抜き物件を探す:前のテナントがカフェだった物件なら、内装・設備がそのまま使えることがある。300〜500万円で開業可能
- エスプレッソマシンのリース:月2〜5万円のリースで初期費用を抑える
- ドリップ専門にする:エスプレッソを出さなければ、ハンドドリップの器具(数万円)で始められる
カフェの原価計算——飲食店との3つの違い
カフェの原価計算は、一般的な飲食店と考え方が違う部分がある。
違い①:コーヒー豆のグラム単価が命
飲食店では「食材費÷完成品の量」で原価を出す。カフェのコーヒーも基本は同じだが、豆の品質(=仕入れ価格)で原価が大きく変わる。
| コーヒー豆の種類 | 1kgの仕入れ価格 | 1杯あたりの豆代(12g使用) |
|---|---|---|
| コモディティ(商業用) | 1,000〜1,500円 | 12〜18円 |
| プレミアム | 2,000〜3,000円 | 24〜36円 |
| スペシャルティ | 3,500〜6,000円 | 42〜72円 |
| COE入賞豆(最高品質) | 8,000〜15,000円 | 96〜180円 |
「うちはスペシャルティコーヒーで勝負する」と決めた瞬間、コーヒー1杯の豆代は42〜72円になる。これに牛乳を加えてラテにすると、原価は100円を超える。
販売価格を550円にしても原価率18%。 「カフェの原価率は10%」とはならない。
違い②:ミルクが原価を押し上げる
ラテ系ドリンク(カフェラテ、カプチーノ、抹茶ラテ)は、ミルクの使用量が原価に直結する。
| ドリンク | コーヒー豆代 | ミルク代 | その他 | 合計原価 |
|---|---|---|---|---|
| ドリップコーヒー | 30円 | 0円 | カップ5円 | 35円 |
| カフェラテ(S) | 30円 | 25円 | カップ5円 | 60円 |
| カフェラテ(L) | 30円 | 45円 | カップ8円 | 83円 |
| オーツミルクラテ | 30円 | 60円 | カップ5円 | 95円 |
| 抹茶ラテ | 抹茶40円 | 35円 | カップ5円 | 80円 |
牛乳は1L約200円。カフェラテ1杯に約120〜200ml使うと、ミルク代だけで25〜45円。
オーツミルクやアーモンドミルクにすると1L 400〜600円。「ヘルシー志向で植物性ミルクを」と安易に導入すると、原価率が跳ね上がる。
違い③:廃棄(ロス)の計算が独特
カフェには2つのロスがある。
豆のロス:焙煎後のコーヒー豆は2〜3週間で風味が落ちる。開封後は1週間が目安。売り切れなかった豆は、原価としてそのまま損失になる。
■ 豆のロス計算例
・1日の使用量:500g
・1週間分を仕入れ:3.5kg
・実際に使った量:3.0kg(0.5kg余り)
・豆の単価:3,000円/kg
・ロス:0.5kg × 3,000円 = 1,500円/週
・月間ロス:約6,000円
フードのロス:サンドイッチやケーキは当日〜翌日が賞味期限。売れ残れば廃棄。仕入れケーキはロスが出ると原価率50%超えの損失になる。
カフェの収支シミュレーション
ケース1:ドリンク中心の小規模カフェ(10坪・1人営業)
■ 前提
・席数:10席
・営業日数:月25日
・1日の来客数:35人
・客単価:600円(ドリンク+軽食)
・月売上:52.5万円
■ コスト
・家賃:12万円
・食材・ドリンク原価(原価率18%):9.5万円
・人件費(オーナー1人+バイト少々):5万円
・光熱費・水道:3万円
・消耗品(カップ、ナプキン等):1.5万円
・雑費(通信費、保険等):1.5万円
■ コスト合計:32.5万円
■ 利益:20万円
■ 利益率:38%
月20万円。 ここからオーナーの生活費を出す。1人暮らしならなんとかなるが、家族を養うには厳しい。
ケース2:フード充実のカフェ(10坪・2人体制)
■ 前提
・席数:12席
・営業日数:月25日
・1日の来客数:45人
・客単価:1,000円(ドリンク+フードセット)
・月売上:112.5万円
■ コスト
・家賃:15万円
・食材・ドリンク原価(原価率25%):28.1万円
・人件費(オーナー+スタッフ1人):20万円
・光熱費・水道:4万円
・消耗品:2万円
・雑費:2万円
■ コスト合計:71.1万円
■ 利益:41.4万円
■ 利益率:37%
客単価を600円→1,000円に上げるだけで、利益は20万円→41万円と2倍に。 ただし、フードを出すとスタッフが必要になり、人件費が増える。
利益を出すカフェのメニュー設計——5つの原則
原則1:ドリンク売上比率60%以上を死守する
カフェの利益の源泉はドリンクだ。ドリンクの原価率は10〜15%、フードは25〜35%。 ドリンク比率が下がると、全体の原価率が上がって利益が減る。
| ドリンク比率 | フード比率 | 全体原価率(概算) |
|---|---|---|
| 80% | 20% | 14% |
| 70% | 30% | 17% |
| 60% | 40% | 20% |
| 50% | 50% | 23% |
| 40% | 60% | 26% |
「フードメニューを増やして客単価を上げる」のは正しいが、やりすぎるとドリンク比率が下がって逆効果になる。 バランスが重要。
原則2:客単価800円以上を目指す
コーヒー1杯450円だけでは利益が薄い。セット販売で客単価を上げるのがカフェ経営の基本だ。
| セット内容 | 販売価格 | 原価 | 原価率 | 粗利 |
|---|---|---|---|---|
| コーヒーのみ | 450円 | 35円 | 8% | 415円 |
| コーヒー+トースト | 650円 | 75円 | 12% | 575円 |
| コーヒー+サンドイッチ | 900円 | 235円 | 26% | 665円 |
| ラテ+ケーキセット | 1,000円 | 280円 | 28% | 720円 |
コーヒーだけの客と、ケーキセットの客では、粗利が415円→720円と1.7倍違う。
原則3:「原価が安いのに高く売れる」メニューを持つ
カフェのメニューの中で、原価率が低くて利益に貢献するものを「稼ぎ頭」と呼ぶ。
カフェの稼ぎ頭ランキング:
| 順位 | メニュー | 原価率 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 1 | ドリップコーヒー | 5〜10% | 豆と湯だけ。カフェの利益の柱 |
| 2 | 紅茶 | 4〜8% | ティーバッグなら原価10〜20円 |
| 3 | レモネード | 9〜11% | レモン+砂糖+水。見た目がSNS映えして単価も取れる |
| 4 | 自家製焼き菓子 | 15〜20% | バターと小麦粉が主原料。大量生産で原価が下がる |
| 5 | トースト | 10〜13% | パンとバター。アレンジで差別化可能 |
逆に利益を削るメニュー:
| メニュー | 原価率 | 注意点 |
|---|---|---|
| 仕入れケーキ | 42〜58% | 売れ残りロスで原価率がさらに上がる |
| オーツミルク系ラテ | 20〜25% | 植物性ミルクが高い |
| フルーツ系ドリンク | 25〜30% | 季節で仕入れ価格が変動 |
原則4:「滞在時間」のコストを意識する
カフェ特有の問題がこれ。お客さんがコーヒー1杯で2時間座っている。
居酒屋なら1時間半で回転する。ラーメン屋なら15分。カフェは「ゆっくりできる」が売りだからこそ、1席あたりの売上効率が悪い。
■ 1席あたりの時間売上比較
居酒屋:客単価3,500円÷滞在1.5h=2,333円/時間
ラーメン店:客単価1,000円÷滞在0.25h=4,000円/時間
カフェ:客単価600円÷滞在1.5h=400円/時間
1席1時間あたり400円。 ここから原価と固定費を引く。
対策としては:
- テイクアウト比率を上げる(席を使わず売上が立つ)
- モーニング、ランチ、午後の時間帯別セットで客単価を変える
- 2杯目割引(追加注文を促して、滞在時間あたりの売上を上げる)
原則5:コーヒー豆のグラム管理をする
飲食店で食材のグラム管理が重要なのと同じで、カフェではコーヒー豆のグラム管理が利益を左右する。
■ 1杯あたりの豆使用量の差が利益に与える影響
前提:スペシャルティ豆 4,000円/kg、月販売800杯
・1杯12g(標準)の場合
月間使用量:9.6kg → 豆代:38,400円
・1杯15g(多め)の場合
月間使用量:12kg → 豆代:48,000円
差額:月9,600円 → 年間115,200円
たった3gの差が、年間11万円以上の差になる。 「少し多めに入れてあげよう」という善意が、利益を削っている可能性がある。
KitchenCostでドリンクの原価をメニューごとに登録しておけば、豆のグラム数を変えたときに原価がどう変わるか、すぐに確認できる。
「カフェをやりたい」と思ったら、まず計算すること
損益分岐点を先に出す
「いくら売れば赤字にならないか」を最初に計算する。
■ 前提
・家賃:12万円
・人件費(自分含む):20万円
・光熱費:3万円
・消耗品・雑費:2万円
・固定費合計:37万円
■ 損益分岐点
固定費 ÷(1 − 原価率)
= 37万円 ÷(1 − 0.20)
= 37万円 ÷ 0.80
= 46.3万円
→ 月売上46.3万円以上で黒字化
客単価700円なら月661人、25日営業で1日約26人。10席のカフェで1日26人なら現実的な数字だ。
ただし、ここでの「黒字」はオーナーの生活費(20万円)を含めた計算。「利益」を出すには、この損益分岐点をさらに超える必要がある。
立地選びと家賃のバランス
カフェの集客は立地に大きく依存する。でも、いい立地は家賃が高い。
| 立地 | 10坪の家賃目安 | 集客力 | 必要客数/日 |
|---|---|---|---|
| 駅前・繁華街 | 20〜35万円 | 高い(通行人多い) | 40〜55人 |
| 住宅街 | 8〜15万円 | 低い(固定客中心) | 20〜30人 |
| ロードサイド | 10〜20万円 | 中程度(駐車場次第) | 25〜40人 |
家賃が2倍になると、必要な客数も2倍近くになる。 「駅前の好立地で」と言いたくなるが、その分だけ売上のハードルも上がる。
住宅街で固定客を掴む戦略のほうが、原価管理はしやすい。
今週やることチェックリスト
- 自分がやりたいカフェのメニューを10品書き出して、1品ずつ原価を計算してみる
- ドリンクとフードの比率を考えて、全体の原価率が25%以下になるか確認する
- コーヒー豆の仕入れ先を3社調べて、1kgあたりの価格を比較する
- 候補の立地で家賃を調べ、損益分岐点に必要な客数を計算する
- 近所のカフェに1週間通って、客数・客単価・滞在時間を観察する
- KitchenCostでドリンクメニューの原価をシミュレーションしてみる
出典・参考:
- キーコーヒー「飲食店やカフェの原価率と回転率を知ろう!」(2025年)
- スマレジ「カフェの原価率を理解しよう!計算方法や抑えるコツを徹底解説」(2025年)
- テンポスフードメディア「カフェで原価率が低いドリンク・高いドリンクは?」(2025年)
- 個人カフェ開業.com「カフェ運営の重要ポイント!原価率の設定とロス率削減の方法」(2025年)
- UCC「カフェ開業のための資金調達ガイド」(2026年)
- ユビレジ「コーヒーの原価ってどのくらい?」(2025年)
- note「原価率から見る、珈琲屋は儲かる業態なのか」まっつー@カフェ経営者4年目(2024年)